温度ファン(SmartFAN)の製作

安いATX電源(ケースにおまけも含めて)は、結構FANの音がやかましいです。
かと言って、単純に静音FANに交換するだけでは、風量が足りずに電源がオーバーヒートする可能性があります。
そこで、温度センサー付きFANコントローラを作ってみました。当初PICを使おうかと思ったのですが、12V->5V変換が必要だし、 コストもかかる(少々だが・・)と、言うことで、今回は低コスト&シンプル(Tr×2、R×3、D×2)に製作してみました。


図1a.回路図(低ゲイン)
なけなしの知恵を絞った結果、Q2による電圧増幅+Q1によるエミッタフォロア構成になりました。
温度検出はD1(S1YB20、秋月で10個100円)による順方向電圧降下の温度依存性を利用しています。(普通のシリコンダイオード×2直でも可)。
Q2はDCバイアスの関係上、R3による電流帰還をかけてあるので、電圧ゲインは≒R2/R3=23.5程度なので、D1の温度ドリフトを2mV/℃とすると、0->100℃で4.7V変化することになります(理論上)。 つまりP点の電圧を室温(25℃)で約6Vに設定しておくと、125℃で10.7Vになるはずです。(でも125℃だと他の素子が御亡くなりになりますが・・)
もう少しゲインをあげるなら、R3を10Ωとし、R2をもう少し小さくしても可です。(但しP点の電位が変わるので、この辺はカットアンドトライです)

図1b.回路図(高ゲイン)
温度ゲインをもう少し上げようと思って、R2の代わりにD2(定電流ダイオード)E-822(8.2mA)にしてみましたが、Q2自体が定電流源になるので、P点のDCバランスが非常に不安定になります。
その為、R3の調整が非常にシビアになって、うまくP点を6V付近に持っていくことが難しいです。
それにCRD(定電流ダイオード)自体が高価!

図1c.回路図(高ゲイン)
結局、エミッタ側に定電圧源(ショットキーバリア、D2)を持ってきて、R3自体を小さくすることにしました。
かなり温度ゲインを稼ぐことが出来ますので、図1aで電源のヒートシンクが高熱になるのに、FANがフルスピードにならない場合はこっちの回路の方がいいかもしれません。
但し、電源電圧の変動に対しては、図1aが一番安定していますが図1cはかなり悪くなります。(図1bは問題外に悪い・・)


図2.貴重なBLランクの2SC1815
ゲインを稼ぐため、Q2にはなるべくhFEの大きなトランジスタを使うことにします。
たまたま手元に2SC1815のBLランクがあったので、(20年くらい前にオーディオアンプ用に買ったものだと思う)これを使うことにしました。
GRランク(hFE=200~400)でもいいのですが、一応BLランクはhFE=350~700くらいあります。

とりあえず、図1aの回路で試作して実験しました。

図3.室温(約20℃)でのFANセンサーの周波数 図4.ブリッジ素子に半田ごてを近づけると・・
素子には触れない程度
図5.FANセンサーの周波数が上がりました

センサー付きFANは1回転に2パルス出すので、上記の場合だと室温で720rpm、高温(何℃か判らないが)で1750rpmになります。
テストに使用したFANは山洋電気製のPetit Ace 25(デジットで@300)です。(Mランクだから2350rpmかな?)

図6.センサー(左側)とコントローラ本体(右側) 図7.電源のFAN配線途中に付けてみた 図8.とりあえず本体を自己融着テープで巻いて完成

使用感はまぁまぁです。
この電源、ノーブランドでも結構いい成績出していたので(ActivePFC電源のススメ参照)、負荷をかけてもそれほど発熱しないのでFANは静かなままです。
心持ち風量が若干増える程度かな・・って感じです。
聴覚(FANの音)的に体感したいなら、図1cの回路の方がいいかもしれません。