換気扇タイマー

知り合いの税理士さんに依頼されたのですが、「スイッチを入れると、一定時間後に自動的に止まるようにしたい」と言うことで、 ホームセンターで換気扇用タイマーを探したのですが、埋め込み用しかなくて、かつ高価(2,000円くらい)な上、 手元までコードを引っ張ってこなくてはならず、配線が面倒。
と、言うことで、私も事務所でタバコ吸わせてもらっている負い目もあり、ちょっと作ってみました。

紆余屈折もありましたが、最終的には成功しましたので、一応すべての過程を掲載します。

通常、換気扇(他の電灯とかもそうですが)の基本構成は図1のようになっています。
スイッチ(SW)で負荷(LOAD)をON/OFFさせるわけですが、 このSWの代わりにONになった後、一定時間経過後にOFFになるような回路を取り付ければいいわけです。


図1.基本構成

通常は、タイマーICとか、マイコンで制御するのが正統ですが、今回はあえてディスクリートで組んでみました。
また、出力制御もリレー、SSR、等を使わずに(高いので(^_^;))FETで制御します。
一応考えた基本回路は図2のような回路です。


図2.基本回路

AC-IN、AC-OUT間をダイオードブリッジで整流し、その両端(+側、-側)をFETでON/OFFします。
P-ch、N-chのFETを直列に繋いだり、トライアックを使用すれば、ダイオードブリッジも不要になるのですが、 P-chのMOS-FETが入手困難かつ、タイミング回路も複雑になります。 またその他(制御回路の電源も必要)の理由でダイオードブリッジを採用しました。

とりあえず、図3のような回路を考えて試作しました。
S1を押すと、コンデンサC3に蓄えられた電荷がR3を経由して、C2を充電します。
このときS1を押す時間によってC2の充電量を調整し、Q1がONを保持する時間を変化させるようにしました。 (つまりマニュアル時間合わせ。すごくアバウトですが)
C2の電荷はR2で放電されていき、Q1のゲート電圧がスレッショルド以下になるとQ1がOFFになるという具合です。


図3.最初の試作回路

最初、30VDCで負荷にランプを接続して試したのですが、OFFになる直前(Q1のゲート電圧が3.6V付近)でQ1がものずごく発熱します。
それに、徐々に暗くなって消えるといった動作です。
おそらく、Q1が非飽和領域に入って動作しているためだと思います。(確かに結構ゲート電圧の変化はゆるいです)
AC100Vで使うとどのくらい発熱するかシミュレーションしてみました。(LTSpice使用)
条件:負荷60W
但し、FETはK2417のSpiceモデルがなかったので、IRFP90N20D(IR)を使用。


図4.発熱量シミュレーション

げ、ピークで30Wも、それも数秒間・・。
これでは放熱器なしだとつらいです。単なるスイッチが発熱しては意味がないし・・。 なんとか、OFF時に俊敏にゲート電圧を下げる方法が無いものか? ・・・(思考中) そうか、ドレイン電圧が上がるタイミングで、ゲート電圧を一気に0Vまで持っていければ。
ちょっと面倒だけど、ゲートにトランジスタを追加してC2の電荷を一気に放電させれば行けそうな気がします。


図5.2回目の試作回路

ここで、C2の放電用にQ2を追加しました。
Q1のドレイン電圧が上昇するタイミングで、Q2をONにし、C2を一気に放電する作戦です。
直列にC1が入っているのは、Q1がOFFの時、常時Q2がONにならないようにするための直流防止用コンデンサです。
D7は、Q1がON時にトランジスタQ2のベース電位が-140Vになってしまうので、そのクランプ用です。
とりあえずベース電流は1mA程度あれば100mA程度で放電(hFE=100の場合)できそうです。

とりあえず、シミュレーションでチェック。


図6.2回目試作のシミュレーション

おお、即効でOFFになっていますね。発熱もピーク30Wは変わりませんが、その時間が20μsecなので、問題はないでしょう。
では、組み立てて・・・。
?、スイッチを押しても反応しない??
う~ん、何故だろう?
Q1のゲート電圧が0.2Vのままだ。と、言うことはQ2がONになりっ放し?
Q2のベースが0.6Vまで振れている。
あ、そうかQ1のドレイン電圧はACを整流した脈流のままだ。
そういえば、シミュレーションはDC電源を使っていたっけ。 確かにシミュレーションでACを整流した電源をかけてやるとONにならない!
脈流だと、C1を通してAC成分が流れてくるから、Q2はずっとONになりっ放しになってしまうのは当たり前か。
だったらC1の前で脈流を平滑化すればいい。と言うことで、最終的な回路図は図7のようになりました。

R5,C4でリップルフィルタを構成しています。
あまり時定数を大きくすると、ドレイン電圧の変化が検出できなくなります。
C5,R6はスナバ回路です。換気扇は誘導負荷なので、ON/OFFしたときにFETが壊れないように念のため。


図7.最終の回路

これも、一応シミュレーションで確認。


図8.最終回路のシミュレーション

確認のため、OFF時付近を拡大してみました。
図6よりもドレイン損失が大きくなって(時間的に)いますが、それでも3ms程度なのでOKとしましょう。

早速組み立てて、実験です。


図9.試作基板

ケースに収納する関係上、高さ制限があり、コンデンサ類を寝かせないと入らないので、このような配置になりました。


図10.スイッチオン直後

図11.数分後

ちゃんと消灯しました。FETも発熱しない。よかった・・。
スイッチを押す時間で、OFFになる時間を制御すると最初に書いたので、その時間も計測してみました。
SWを押している時間 ONからOFFになるまでの時間
1秒 2分30秒
5秒 4分55秒
SWを押している時間はAboutですが、一応変化はあるみたいです。
10秒以上はあまり時間的変化はありませんでした。
ケースはタカチ電機工業のSW-95を使用しました。
ちょっと高さが低すぎたかも(H=18)。
内部の配線が大変だった・・。

図12.ケースに収納

図13.装着
現地に装着した写真を載せる予定です。