ダミー電池(電圧降下型)の製作

突然ですが、私は乾電池が嫌いです。(偏見も含んでいます)
懐中電灯やリモコンに電池を入れっぱなしにして、液漏れする経験が多いからです。(;_;)
(液漏れする前に交換すれば良いのでしょうけど、無精者で・・・)
なので、ニッケル水素電池を使っています(充電もできるし)。ただ、Ni-MH電池には下記の欠点があります。

前者に関しては、eneloopとか自己放電が少ないものを使うのが良いのでしょうが、ちょっと高いので・・・
後者に関しては、Ni-Zn(ニッケル亜鉛充電池、1.6Vの公称電圧)を使えば解決しますが、価格も高く30回ほどの充電で、自己放電が大きくなるそうです。(英語版Wiki  http://en.wikipedia.org/wiki/Nickel%E2%80%93zinc_battery より)
よって、Ni-MHより高価ではありますが(と、いっても最近は少し安くなってきた)、Li-ion充電池を使うことにしました。

Li-ion充電池の問題点


図1.とりあえずLi-ion電池(14500,AA,単三サイズ)
↑ Aliでポチった($7.23/4本)
やはり、電圧が高い(約3.7V、充電直後は4V近い)点です。よって、3V駆動のデバイスでしか使えません。
乾電池2本の装置だと、Li-ion1本で賄えるのですが、それで0.7V~1.0Vほどオーバーします。おそらく、そのままでも大丈夫な気がしますが、うちのエアコンのリモコンはダメでした。(図2)
リチウムフェライト系(LiFePO4等(約3.2V))を使えば問題無いと思うのですが、それだと負けを認める事になってしまうので・・・(LiFePO4用のダミー電池はすでに売っていますし)

あと、充放電がシビアです。できれば保護回路付きのものを選びましょう。 (with PCB とか with protection とか書いてあるやつ) ちなみに、安価の割に高容量のやつは、保護回路が無い場合が多いです。

また、正極の凸部が低いです。電池ボックスの端子に接触しない場合は正極に半田を盛る(あまりやりたく無いですが)か、t=2mm程度の銅版をかませる必要があります。

(消費増税後、Aliexpressで買うことが多い電子部品・・AmazonUSAは、日本に発送してくれない所が多くなったし・・
はっきり言って、円安の影響で海外仕入れも厳しくなった。なぜ円安の時は為替逆介入しないのか??日銀さん?・・せめて100円/$くらいに誘導してくれ。)

電圧ドロッパーの考察

0.7V~1.0V程度のドロップだと、ダイオード1本かませばいいやろ。と普通思いますよね?(私もそうでした)
でもリモコンのような低消費電流(100uA程度)だと、1N4148では、0.5V程度しかドロップしません。(図2)
ならば、1N4148×2で、1V程度ドロップさせると、いい具合・・・と思ったのもつかの間(図3)。リモコンのボタンを押すと、液晶表示が薄くなった(図4)。このリモコンはボタン操作と同時にバックライトも点灯する仕様で、その際の消費電流はなんと約50mA!
1N4148は、50mAでのVfは、0.85V~1Vあるので、1N4148×2だと、1.7V~2Vもドロップしてしまうのが原因のようです。(1N4148のデータシートより)


図2.1N4148×1の場合
液晶が全エレメント表示?・・

図3.1N4148×2の場合
一見良さそうだけど・・

図4.ボタンを操作すると液晶がユーレイ表示に・・

他のデバイスも調べてみました。。

表1.デバイス別消費電流(乾電池2本タイプ)
デバイス 定常時 動作時
学習リモコン
Victor RM-A1500
160uA 30mA
Bluetoothマウス
Elecom M-BT2BR
6mA 20mA
ペアリング時
ペン型ライト(ニップル球)
(参考)
- 270mA
リモコンは、IR-LEDを動作させるので、結構動作時の消費電流が大きいですが、マウスは割と変化が少ないです。
参考のためにペン型ライトを光らせてみましたが、普段LEDライトばかり使っていると、たまに豆球の光を見るとノスタルジーを感じます。

ここで、シミュレーションしてみます。
図5の回路で、1N4148×2の場合の電圧降下をシミュレートした結果が、図6です。
(LT-SPICE大活躍?です。Thanks Linear Technologyさん!!)


図5.1N4148×2の評価回路

図6.図4の電圧降下

100uAでは0.96V、50mAでは1.6Vと推測できます。これだけ電圧変化が大きいと(と、言っても0.6V程度ですが)液晶がユーレイ状態になっても不思議では無いですね。
(でも普通、液晶の印加電圧って安定化させるものでは無いでしょうか?コスト削減の為、行っていないのでしょうか?一度リモコンの設計者にお伺いしたいです。)
そこで、もっと電圧変化を小さくできないかを考えてみました。


図7.考案してみた電圧ドロッパー

図7において、微少電流の場合は、D1->R1を経由します。(R1の影響で微少電流の場合は、電圧降下はリニアに変化するけど、無視します)
R1の両端電圧が0.6Vを超えると、Tr1がONとなり、電圧降下はD1+VBEとなるはずです。ここでは、70uAでTr1をONにしたいので、R1を9100(9.1K)Ωとしました。
(Tr1に2N3019をリファレンスにしたのは、Ic=1A程度のトランジスタが使いたかっただけです)

よく見てみると、これってツェナーダイオードの電流ブースターと同じですね。(D1をZennerに変更して向きを逆にすれば)

これもシミュレートしてみます。


図8.1N4148×2と、考案回路の評価回路

図9.図8の電圧降下

図8は、定電流源に直列で、1N4148×2と、考案回路(1N4148+Tr)を接続して、各方式の電圧降下を比較する評価回路です。
1N4148×2は、図6と同じですが、1N4148+Trでは、7~80uA以下ではRの影響により指数カーブ(横軸がLogなので本当は直線)を取っていますが、80uA付近でTrがONとなり、100uA以上では1N4148×2よりも電圧降下率(電流値に対する)が小さくなっています。
本当は1V付近で一定するのが理想ですが、汎用部品ではこの程度で我慢するしか無いでしょうね。

ダミー電池の製作

用意するもの(以下、単三・AA・14500サイズ用)


図10.直径12mmの木の棒

図11.4mmの低頭タッピングと3mmの鍋タッピング

直径12mmの木の棒は、近所のホームセンターでスリット入りが売っていたので、それを購入。あと、電極用に4mmの低頭タッピング(マイナス電極用)と、3mmのナベタッピング(プラス電極用)
低頭タッピングの代わりに、さらタップでも可。(但し、ザグリを入れる必要あり)
あと、長さ調整用にM3orM4ワッシャーがあればOK。

よく、Q&A等で、「木は雷が落ちるから絶縁体ではない」という回答を見かけますが、本来は絶縁体です。(導体・半導体・絶縁体の分類なら)
確かに生木は水分を含んでいるので、若干電気抵抗が低いですが、加工木は乾燥させてあり、電気抵抗もかなり高いです。(1010 ~ 1013Ω・m)
今回の用途では、正直、絶縁性はそれほど問わないし、加工もしやすいので最適かと思われます。
(短絡しても電圧ドロップが無くなるだけですし)


図12.42mm程度の長さにカット
丸棒を40~42mm程度の長さにカットします。(後でワッシャーで全長を調整)

図13・14.下穴をあける
プラス極用に2.5mm、マイナス極用に3.5mmのキリを使って、丸棒の端面に下穴を開けます。
下穴が無いと、タッピングをねじ込んだ時に、割れたり直径が大きくなったりするので注意。

図15.ダイオードを取り付ける
手始めにダイオード(ここでは10DDA-60)を取り付けてみました。
リードの両端をタッピングねじに絡めて締め付けるだけです。
スリットが入っていると、配線がしやすいです(^^)/。若干の掘り込みだけで済みました。

図16.トランジスタ用の穴をあける
ここからが、今回の本番で、図14の下穴の次に5.5mmのキリでトランジスタ用のダボ穴を開けます。
TO-92タイプだと、5.5mmでちょうど入るくらいです。深さは6~8mmほどですので、貫通に注意。(別に貫通しても問題ありませんが・・)


図17.配線をする
図17のようにトランジスタを頭から突っ込み、配線をします。
トランジスタには2SD1246を使用しました。(うちに大量にあったのと、Ic=2A流せるため)
ここでも「スリット入り」で手間が省けました。


図18.3種類のダミー電池
一応、3種類作りました。
左から、10DDA-60×1、10DDA-60×2、1N4148+D1246です。


図19.完成
図18のままでも使えますが、一応直径調整用にt=0.5の厚紙を巻き、その上からφ15の熱収縮チューブをかぶせて加熱します。(木が燃えないように注意)
大体14mmになれば完成です。(今回製作したののは、13.5mmくらいでしょうか)
材質が木なので、電流の流しすぎに注意。

評価とか

実測してみました。(図20)


図20.完成品の実測値

100uAでは、ほぼ1V、100mAでは電圧降下効果?の差が大きくなっています。理想は100mAでも1Vですが、1N4148+D1246はシミュレーションよりもよくなっています。
おそらく、シミュレーションで使った2N3019よりも2SD1246の方が適していたのだと思われます。また、大電流では10DDA-60も結構頑張っています。


図21.リモコンに装着

図22.リモコンで動作確認
バックライトが点灯しても大丈夫
ボタンを押しても、ユーレイになりません。\(^o^)/
でも、もうすぐエアコンの交換時期(かれこれ13年使用)なので、まもなくこのリモコンもお払い箱に・・・
まあ、何か他の用途で使いましょうか。。。

ただ、材質が木なので、せいぜい2~300mA程度が限界かと思います。